木村紘規のビジネス初心者塾

ビジネス初心者のための思考法

献血人数を増やす方法—マーケティング思考法

f:id:anatanosobani:20210904224324j:plain


ご高覧いただきありがとうございます。

 

先日わたくしが地下街を歩いていると

献血お願いいたします!全血液型が足りません!献血お願いいたします!」と、大きな声で必死に叫んでいる男性の方がいらっしゃいました。

わたくしはその時、仕事に向かう途中で時間が無くそのまま素通りしようかと思いましたがあまりにも必死に叫んでいるので少しお声かけさせていただきました。

その際、お話を聞かせていただいてわたくしが率直に「導入部分として失敗では?自分ならこうするな」と思いましたのでそれを書かせていただきます。

マーケティング思考の観点で書かせていただきますので色々なご意見があるかとは思いますがあなたの商品の販売数アップの一助になればと思います。

【目次】

 

 

視点と伝え方が大事

 

結論から言うと、上記の献血をお願いしていた男性には特にアドバイスなどはしませんでした。

と、いうのも献血をお願いする際の言い回しに規則や規定、制限などが設けられているとしたら、わたくしのアドバイスが適用できないと判断したからです。

ただ、そこに規則や規定などの制限が無ければ使えるように、ヒントだけはこの男性に残してきました。

要は規則などが無ければ視点と伝え方を変えるだけで献血人数を増やすことは可能なのです。

同じことがあなたの商品にも言えるかもしれません。

 

①まずは現状の把握

わたくしは上記の男性に簡易的に2つの質問をさせていただきました。

 

1.現状1日何名の方が献血をしてくれているのか?

2.献血をすることによって何かメリットはあるのか?

 

上記2点です。

と、いうのも現状を把握しないと何をどう手を打てば良いのか全く分からないからです。

 

1の質問に対し男性から「平日は50名前後で土日だと80名くらい」とご返答いただきました。

この時歩いていた地下街はデータを見る限り(市で出しているデータで正直あまりあてにならないが)では平日でだいたい1000名くらい、土日だと2000名くらいの往来があるので現時点でのやり方で献血に応じてくれている方は5%程度といったところでしょう。

 

2の質問に対しては「無料で置いてある雑誌が読めるのとジュースがもらえます。あとはちょっとしたお菓子も食べられるのと数日お時間をいただきますが簡単な血液検査の結果もご自宅に郵送されるのがメリットですね」とご返答いただきました。

 

わたくしはこのご返答をいただいた時点で「伝え方を変えれば献血してくれる方(集客率)を10%程度に上げることは可能なのでは?」と思いました。

正直、実際にやってみて検証したわけではないので絶対に上がる、とは言い切れませんが男性の伝え方があまりよろしくないのはご理解いただけるでしょうか?

もしも、あなたがこの男性の立場ならどのように道行く人の足を止めますか?

 

②視点を自分ではなく相手に変える

さて、この男性の大きな間違いがどこかというと視点を相手ではなく自分に向けている、ということです。

(念のため補足として伝えておきますがこの場合の”自分”というのは”自社都合”ということで私利私欲のためにこの男性が献血をお願いしているという意味ではございません)

上記でも書きましたが男性の伝え方は「献血をお願いします!全血液型が不足しております!」です。

つまり相手→自分への血液(価値)の提供を呼び掛けるものになっているのです。

たしかに献血は慈善行為で人のためになることなので慈善活動に興味がある方は足を止める可能性はあります。

しかし、他の人はどうでしょうか?

おそらく慈善活動に興味がない方は時間があっても足を止めてはくれないと思います。

要は慈善活動に興味のある方々が現在この地下街で5%程度往来していて献血に協力してくれているということです。

これを自分→相手への価値の提供へ変えることが出来たなら慈善活動に興味が無い方でも足を止めることが出来ます。

では、献血の場合どのように相手への価値の提供に変えるのか?

もうお分かりですね。

メリットを伝えてあげれば人は足が止まります。少なからず興味は持つはずです。

ところでこの記事をお読みいただいているあなたは献血によって得られるメリットはご存じでしたか?

恥ずかしながら、わたくしは存じておりませんでした。つまりわたくしも慈善活動に興味がない95%側の人間です。

そんな95%側の人間からのアドバイスとして、わたくしなら下記のように伝えます。

現在、簡易血液検査を無料で行っております。代わりに献血をお願いしておりますがお菓子も食べられジュースもお渡ししております。血液検査をされたい方はいらっしゃいませんか?無料です」

 

どうでしょうか?

あなたならどちらの伝え方で少し話しを聞いてみようと思いますか?

 

おそらく、この男性の伝え方ですと献血に興味がない方は「なんだ、献血か」くらいで素通りしてしまいますがわたくしが考えた伝え方ですと献血に興味がない方でも「血液検査が無料?どういうことだ?」くらいに興味は持っていただけると思います。

また“献血をする→血液検査の結果が届く”という内容は全く同じものですが男性の伝え方ですと一方的に価値を相手から提供してもらう、というように聞こえますがわたくしの伝え方ですと自分から相手への価値提供に聞こえます。冷静に分析する方に対しても少なからず相互関係になっているように聞こえるのです。

 

③市場領域は絞りすぎないほうがいい

上記、献血についてお話ししましたがこの男性のやり方が絶対的に間違えているというわけではありません。

実はわたくしの考えた伝え方ですと1つデメリットがございまして、しっかりとした血液検査を目的とした方々は別に有料で検査をしていただく必要があり、その方々は対象外になってしまうのです。

(後日、この男性が所属する団体に直接電話をかけて聞いてみました。上記のようなデメリットが生じる可能性があるので血液検査の事は前面に押し出していないとのご回答をいただきました。)

 

これを懸念した場合は男性の伝え方のほうが後々の手間は省けるというメリットがございます。

しかし、そういう血液検査目的の方々にはちゃんと説明してご納得いただいたうえで簡易式の血液検査(献血)かしっかりとした血液検査(有料)か、それとも今回は見合わせるのかを選んでいただければそれで問題は解決します。

ここまで話しが進んだ場合それはもう「慈善活動家」ではなく立派な「お客様」だからです。

(実はこの“お客様に選んでいただく”というのもポイントの一つですが、ここに関してはまた別の機会に説明させていただきます。)

この献血の例でいうと、まずは道行く人に足を止めていただきこちらの話しを聞いてもらえなければいつまでたっても“市場の領域”は広がりません。

つまり、今のままでは慈善活動家しか顧客対象にならず地下街を往来する5%の方々しか献血に応じてくれないのです。

本当に血液が足りずに困っているのなら顧客対象を広げ“市場の領域”を拡大する必要があるのです。

そのために導入部分で興味を持ってもらい市場の領域を“慈善活動家”から“健康を気にする人”へと拡大するほうがベターだとわたくしは考えます。

 

④自社の商品を改めて見てみよう

ここまで献血の話しで進めましたがこれはあなたの商品にも置き換えられることができる可能性があります。

献血の場合、市場にメリットが伝わってなくメリットを伝えることによって市場領域の拡大を図ることが出来るというものですがあなたの商品はどうでしょうか?

もしかしたら、あなたの商品も実は自分で気づいていないだけで自分が考える市場以外にもメリットがあり市場を拡大することができるかもしれません。

例えば「ドライヤー」をイメージしてみてください。

あなたは「ドライヤー」と聞くとどんなことをするイメージを持ちますか?

髪を乾かすお風呂上りに使うイメージを持たれたのではないでしょうか?

そこの視点を変えてみてください。

見方を変えれば「ドライヤー」というものは温風も冷風もでる機械です。

わたくし実はエアコンが家に無く(扇風機はありますが)夏の暑い日ですぐに体の温度を下げたいときにドライヤーで冷風を出し凉を取ったことがあります。

逆に冬の寒い日に外から戻り体が冷え切ってすぐに暖を取りたいときに温風で体を温めたこともあります。

もしも、ここに観点がいけば電池式で動くドライヤーを開発すれば外で使用可能になり、夏は簡易式の扇風機、冬は簡易式の温風ヒーターとして一年中使える簡易エアコンとして売り出すことが出来ます。

この場合、市場領域は「髪を乾かす道具が欲しい人」から「簡易式エアコンが欲しい人」へと拡大することが出来るのです。

実際に上記の物を商品化するにはいくつかの問題点もございますが現在の日本の技術力なら容易に解決することが出来るでしょう。

ですので、ドライヤーのように「こういうものなのだ!」と決めつけるのではなく「なにができるものなのか?」を今一度見直してみてください。

思いがけないメリットと需要が潜んでいるかもしれません。

 

⑤まとめ

以上の事を踏まえたうえで、あなたの商品に対して集客率がいまいちの場合は市場にしっかりとメリットが伝わっているかを検証してみてください。もし伝わりきっていないのならどのような伝え方がベターで相手にしっかりとメリットが伝わるのかを今一度検証してみてください。

メリットが市場にしっかりと伝わっており集客率が悪いのなら市場そのものが狭すぎる可能性があるので、その場合は自分の商品が現在ターゲットにしている市場領域以外にメリット(需要)が無いか今一度見直してみてください。

どうしても自分では思いつかない場合は他の方(できるなら業態が全く別の方がベター)に聞いてみるのも一つの手です。

 

また、商品にしろサービスにしろ導入部分では興味を持ってもらうように努めるべきです。

実はこの記事のタイトルもあなたの目を止めるためにいくつかの候補を考えました。

せっかくなので没にしたものを5つ書いておきます。

 

没1「献血人数を増やすのは簡単にできる-マーケティング思考法」

没2「献血をしてもらうのは簡単にできる-マーケティング思考法」

没3「あなたの商品のメリットの伝え方-マーケティング思考法」

没4「市場領域を絞りすぎるな-マーケティング思考法」

没5「ドライヤーって髪を乾かすものだと思っていませんか?-マーケティング思考法」

 

他にもいくつか候補がありましたがわたくしの中では「献血人数を増やす方法-マーケティング思考法」がベターだと思い今回このタイトルにいたしました。

没になったタイトルの理由ですが1、2、4は上から目線での言葉遣いであまり良い印象を持ちにくいということ。3はあまりにも普通過ぎて内容が想像できるので開かれる可能性が低くなるということ。

5は、内容は想像しづらく意外性はあるもののタイトルとしては長すぎる、といった理由です。

そして今回このタイトルを付けた理由ですが

「慈善活動もマーケティングで人数を増やすことができるの?」という疑問から興味を引きやすいのではないか、と考え付けました。

とにかく導入部分では興味を持ってもらうように努めなければならないのです。

そうそう、もう一つタイトルを「献血人数を増やす方法-マーケティング思考法」にした理由があったのを書き忘れておりました。

願わくば、冒頭で出てきた必死に献血をお願いしていた男性に読んでいただきたかったからです。